「ミュンヘンの悲劇」はマンチェスター・ユナイテッドというクラブを語る上で避けることのできない悲劇であり、数少ない生存者のひとりでもあるボビー・チャールトン個人にとっても重要なできごとです。
1958年2月6日に起こった航空機事故「ミュンヘンの悲劇」。マンチェスター・ユナイテッドがヨーロッパ・チャンピオンズ・カップのイングランド代表としてユーゴスラビアに遠征、準決勝進出を決めてイギリスへ戻る途中の出来事でした。
遠征メンバーだった当時21才のボビー・チャールトンもこの事故に巻き込まれますが、監督のマット・バスビーとともに奇跡的に一命を取り留めます。
主力選手11名中8名が死亡、生存者のうち2名は復帰がかなわず、クラブそのものが存亡の危機に立たされます。ボビー・チャールトン自身も負傷以上に精神的に大きなショックを受け、一時はボールにもさわれない状況に陥ります。
その後、事故で主力が抜けたチームをボビー・チャールトンが中心となり、後のスター選手、ジョージ・ベストやデニス・ローなどの若手を牽引して立て直し、マンチェスター・ユナイテッド黄金時代を築きます。
そして、ついに事故から10年後の1968年、事故でかなわず念願だったチャンピオンズ・カップ優勝を勝ち取ります。
以上のような、事故からチャンピオンカップ優勝にいたる物語は、様々な形で語り継がれてきましたが、当ブログ開設とタイミングを同じくして、このミュンヘンの悲劇とその後の危機から立ち直る軌跡を描いた映画が公開されます。
『ユナイテッド -ミュンヘンの悲劇-』(公式サイト)2012年7月7日公開
コーチのジミー・マーフィーと、選手ボビー・チャールトンを軸とした物語です。
1958年、英国の強豪サッカーチームが突然の悲劇に襲われる。しかし、ひとりのコーチの情熱が瀕死のチームを復活へと導いてゆく―。全英が感涙した、あきらめない夢と愛に満ちた真実の物語。(公式サイトより)
この事件は、マンチェスター・ユナイテッドはもちろん、サー・ボビー・チャールトン個人だけでなく、イングランドひいてはサッカーの歴史上、非常に重要な出来事ですので、是非覚えておいてください。
この映像作品はイギリスでも評判がよかったようです。この機会に御覧いただければと思います。
なお、ミュンヘンの悲劇については、マンガ「栄光なき天才たち」13巻(森田信吾作画・集英社)でも取り上げられています。(現在は廃版。下写真は古書店で入手のもの。)少し前の作品ですが、お読みになった方も多いのではないでしょうか。
こちらは70数ページの短編で、68年のチャンピオンズカップ優勝までが描かれています。このマンガがきっかけでユナイテッドのファンになったという声もよく聞かれます。
廃版が残念ですが、まだ古書店では入手できますし、ときどき総集編(写真左)などの形で出版されていたようですので、もし見かけることがあれば、一読をおすすめいたします。
さて、ここまで見て、サー・ボビー・チャールトンが今日まで尊敬を集める理由はおわかりいただけたかと思います。
ミュンヘンの悲劇を乗り越え、マンチェスター・ユナイテッドの黄金時代を築き、イングランド初のワールドカップ優勝をもたらしたその偉大な功績にあることはもちろんです。
しかしそれらは、サー・ボビー・チャールトン自身の、「サッカー界随一の紳士」あるいは「スポーツマンシップの鑑(かがみ)」などと評される誠実な人柄あってのことです。
そして、そういう人柄であったからこそ、ミュンヘンの悲劇を乗り越え、数々の栄光を勝ち得たのだと思います。
「サッカーは紳士のスポーツ」、「サッカーは子供を大人にし、大人を紳士にする」といわれますが、その意味では、サー・ボビー・チャールトンはサッカーというスポーツを体現しているといってよいのかも知れません。
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